免疫と腸内細菌叢が出来るまで・・・
生まれたばかりの新生児の便は無菌ですが、産道や肛門周囲に生息していた菌を口から取り込み、一日目には大腸菌、腸球菌が主となり3〜4日目になるとビフィズス菌が現れ始め5日目になると最優性菌となり、離乳食を摂るに従って成人の腸内フローラの構成に近づいていくのですが、疫学的研究によれば乳幼児期でのある種の細菌やウイルスの暴露がその後のアレルギーの発症阻止に重要であるとの説が唱えられております。
2000名の疫学調査により、アレルギー疾患発症のリスクファクターは、
@ 母親にアレルギー疾患があること
A 百日咳ワクチンの接種を受けていること
B 2歳までの間に抗生物質の投与があったこと
が上げられています。
新生児の免疫系はTh2に傾いており、生後様々な微生物によって適切な刺激を受けTh1が次第に発達し、Th1/Th2(*)のバランスの取れた免疫系が完成すると考えられます。
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*Th1/Th2とは?
Th1細胞は細菌やウィルスなどの異物を攻撃、破壊して感染を防御し、さらにマクロファージをも活性化します。Th2細胞はカビやダニなどに反応し、B細胞にカビやダニに対するIgE抗体を作らせます。この2つは、免疫全体のバランスを保つために互いにけん制しています。しかし、このバランスが崩れ、一方の側へ優位に傾くことにより、疾患の発症に繋がりかねません。例えば、Th1細胞が過剰になると自己免疫疾患を引き起こし、Th2 細胞が過剰になると喘息等のアレルギー疾患が発症しやすくなるのです。 |
この説の裏付けとなる実験が無菌マウスと正常なマウスを用いた試験で証明されています。
この結果は、正常な免疫系の発達には生まれた後の早期の間に健全な腸内フローラを持つことが大切であると言うことを示唆するものです。
次にアレルギーだった妊婦、一群64名に乳酸菌を予定日の2〜4週間前より出産後6ヶ月まで毎日飲ませ、人工栄養になった場合は子供に与え続け、一群68名にはプラセボ(偽薬)を同様に与え、2歳になったときアトピー性皮膚炎の発症率を比較したところ、プラセボ群では46%が発症しているのに対し、乳酸菌投与群では半分の23%でした。
統計学的に見て乳酸菌の投与が腸内フローラを改善し、アトピー性皮膚炎の発症を予防することが証明されたのです。
近代の衛生的な分娩や帝王切開分娩では新生児の口経によりの有益菌導入のルートが遮断され、人の体にとってあまり良くない菌が最初に腸内に定着してしまう可能性があり、また正常分娩でも母親の腸内フローラあるいは膣フローラに異常があれば正常な腸内フローラを獲得できなくなり、赤ちゃんはアレルギー発症のリスクを負うことになります。
これらの状況に対してプロバイオティクス(宿主の腸内細菌叢の改善に有益な働きをする生きた微生物製剤)の応用はアレルギー疾患予防に十分答えうると期待されているのです。
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